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市立魔法専門学校

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 『えれくとりっく・えんじぇぅ(Full Ver.)』は2007年10月10日にニコニコ動画にて発表された楽曲で、2009年8月8日現在で再生数65万、マイリスト2万強を誇る、ミク黎明期におけるヒットソングである。

 僕がこの曲を『みくみくにしてあげる♪』に続く2番手として紹介するのには少々訳があって、それは、この先初音ミクひいてはVOCALOIDに関連する多くの楽曲その他について語るときに一つのキーワードとなる「電子の歌姫」を触れるのに当たり、この『えれくとりっく・えんじぇぅ』が非常に適当だからだ。

 音声合成・デスクトップミュージック (DTM) ソフトウェアである初音ミクは、端的に言えば楽器である。しかし、人間の音声を扱い、人間的に歌える機能を備えること、また、ソフトウェア自体がバーチャルアイドル(バーチャルシンガー)と見立ててキャラクター付けされていることなどから、初音ミクは人間的であり、一個の人格を備えているとみなされることがままある。

 当然、それは個々人が“それぞれの”ミクにつける設定であって、実際がそうであるはずがない。が、実はこれはVOCALIDを受け入れ、楽しむにあたって、非常に重要な意味を持ってくる。
 何故なら、「初音ミクをはじめとしたVOCALOIDにはいわゆる魂が存在する」という設定は最早一つの定番であり、その設定に基づき制作される楽曲・PV等は膨大な数に上り、且つ、これからも続いてゆくであろう概念の一つだからである。

 「0と1しか分からない ワタシに"I"を教えてくれた」

 との歌詞が指し示すように、『えれくとりっく・えんじぇぅ』はその極みといってもいい。
 人ではないけれども人らしくあるもの、精神性を持つものでありながら、生物と無生物の狭間に偏在させることで、人間や自然に対する儚さ・切なさといった感情的なものから、その存在故の無限の可能性までを、「電子の歌姫」は自由に引き出すことができるのである。

 これは、ミクの開発元による絶妙な按配の設定が、ミク自身を非常にニュートラルな立場にしていたが故の成功といえる。また、電子の世界にどっぷり浸かりながらも、どこかアニミズム的な考え方を捨てきれない現代人であるからこそ、ヒットしたともいえるだろう。

 シンプルな歌詞、シンプルな画像であるからこそ、この『えれくとりっく・えんじぇぅ』は多く可能性を持つ。視聴者独自の解釈、感覚によってPV・アレンジがなされ、様々な方向へえんじぇぅが羽ばたいていったことがその証拠である(こちらのPVにおける、2番歌詞の逆転の発想ともいうべき解釈はその秀逸な例)。

 こうした「電子の歌姫」として描かれた世界を、太古の神話やSFの王道となんら変わらない一種のロマンと言ったら、お笑いになるだろうか。もちろん、それはそれで構わないだろうし、僕もVOCALOIDを高尚なものにする気など毛頭ない。
 ただ、VOCALOIDから生み出されるものをエンターテイメントと位置づけるのならば、それをより楽しむ方法を試してみるのも悪くない。 

 彼女をガラテアに据えるのはやり過ぎだが、僕たちがピグマリオンを演じるのもまた一興。
 『えれくとりっく・えんじぇぅ』にはそうした魅力が詰まっている。

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 僕がこれから先、VOCALIDのあれこれ書いてゆくとしたら、まず何よりも先に書かなくてはいけないのが、この『みくみくにしてあげる♪』についてだろう。
 ご存知の通り、初音ミク…というよりも、音声合成ソフトによって作られた楽曲の中で恐らく最も有名な曲であり、ニコニコ動画において、マイリスト歴代1位・再生数歴代2位(共に2009年8月現在)を誇る、初音ミクの代表曲である。象徴する曲と言い換えてもいい。

 さて、ミクの名前を聞いたことがあるのならば、まず知らない者はいないこの『みくみくにしてあげる♪』だが、作者によってニコニコ動画に投稿されたのが2007年9月20日。DTMソフト『初音ミク』の発売日が2007年8月31日なので、ミク発売から一月も経過しておらず、まさしくVOCALOID黎明期の作品といえる(勿論、音声合成ソフトは遥か以前より存在していた。また、MEIKOKAITOといったVOCALID第一世代(ミクは第二世代)自体もリリースは古く、ここでいう黎明期とはごく一般的な普及が始まったことを指す)。

 この頃といえば、僕がニコニコ動画に最も嵌っていた時期で、ご多分に漏れず初音ミクへの関心も高まっていた。…が、この時僕が主に聴いていた曲は『おしえて!だぁりん』『Ievan Polkka』で、ランキング上位で祭状態になっている『みくみくにしてあげる♪』には、それ程頻繁には近寄らなかった。
 というのは、嘗ての僕はいわゆる“祭”にはあまり興味の無い人で、且つニコニコ動画は好きなものの、コメントはあまりしないユーザーだったからだろう。

 初期を彩った『レッツゴー!陰陽師』『true my heat』などの動画を見たことがある人ならわかるだろうが、当時のニコニコ動画は“弾幕”が人気を博しており、弾幕の厚さは人気のバロメーターといえた。
 サビの「みっくみくにしてあげる(やんよ)」における弾幕を見れば、『みくみくにしてあげる♪』が盛り上がった理由の一つがわかるだろう。ボコボコにしてやんよAAの効果も含め、時流に乗ったことが更に『みくみくにしてあげる♪』を時代の寵児へと押し上げたのである。

 こうして人気のピークを迎える『みくみくにしてあげる♪』だが、まさに絶頂といえる時期に、この曲は変革の時を迎える。

 詳しくはこちら

 青天の霹靂といっていい。多くのユーザー、楽曲制作者たち、そして恐らく何より『みくみくにしてあげる♪』の作者にとって、衝撃的な出来事だったろう。
 VOCALOID、そして初音ミクは、著作権・金銭といった問題に本格的に足を踏み入れることとなったのである。
 当時、本家動画は荒れに荒れ、一部の心無いユーザーによる罵詈雑言が弾幕となって動画を駆け抜けていった。作者を励ます声、問題についての見解、初音ミクへの思い。そういった様々なものが、コメントや動画、楽曲となって、一種の混沌を形成した。

 結局、年末にこの騒動には一応の決着が図られるが、当事者以外はこの件についての顛末、詳細を知り得ていない。しかし、イメージとしての『みくみくにしてあげる♪』に大きな打撃を与えたのは間違いないだろう。以後、暫くの間、この動画は荒れることとなる。

 それでも、曲を聴いたことによって、件の問題を通して、何がしかのシンパシーを受けた人が本当に大勢いたのだろう。その後も、この曲のアレンジ、オマージュといった関連動画は後を絶たない。
 そうした時間の流れの中で、『みくみくにしてあげる♪』は次第に傷を癒していったのだろうか。
 最近でも、VOCALOID関連初のコンシューマーゲーム『初音ミク -Project DIVA-』における開発元・SEGAの公式宣伝動画(現在は公開終了)に採用され、『初音ミク ベスト~impacts~』と名乗ったアルバムCDで事実上のトップ曲を飾るなど、やはり別格の存在感と輝きを見せつけるのである。

 先の事件を目の当たりにした時の、何とも言えない悲しさを体験している者として、苦しみ、傷付きながらも、常に先頭を切って道を切り開き、邁進してゆく『みくみくにしてあげる♪』には、感動すら覚える。
 僕らが通る道は、彼女が作った道なのだと。

 紛れも無く、生きた伝説。それが『みくみくにしてあげる♪』という曲なのである。


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